AnOpening 09
宇宙船が着陸した場所は人気の無い荒野だった。
大気圏突入の位置や角度の関係から、敵もまた近い場所へと着陸する事になる。
ベジータ王がメディカルマシンを確認すると、治療完了まで数分となっている。
相手を待伏せる為にはこのまま治療完了まで全員が船内にいるわけにもいかず、治療中の2人を残して4人は地球の大地へと降り立った。
真っ先に目を引かれたのは頭上に広がる空。
探査機から送られてきた映像によって解っていた事だが、実際に己の目で見ると受ける印象が違う。
惑星ベジータの空とは異なる、青空。
空の色が違う為なのか、星自体が長閑な雰囲気を醸し出している様に感じる。
「良い星だな・・・」
重力も惑星ベジータより遥かに軽い。
「しかし、この状況を見ますとカカロットに何があったのか・・・」
探査機の映像で確認してはいたが、戦闘力が低かったとは言えサイヤ人の赤ん坊が送り込まれているにしては平和すぎる。
空も大地も風も。
全てが、今、この星の上に争いが無い事を教えていた。
「スカウターで探そうにも、カカロットの戦闘力と似たり寄ったりの数値ばっかだしな」
取り敢えずスカウターのスイッチを入れてみるが、表示される数値はどれも一桁の者ばかり。
戦闘力が2しかなかったカカロットを探すのはこの星では困難だった。
「貴様ら！フリーザの手先か！」
スカウターで辺りを探っていると、背後から突如声を掛けられる。
振り向けばそこには地球人と思われる青年がいた。
スカウターの対象をその青年へと向けるが、スカウターには何の反応も無い。
「小僧！何故フリーザの名を知っている！」
返事を返したターレスとその後方にいるベジータ王の姿を目にした少年の顔色が変わった。
「
さん」
口走ってしまった言葉をかき消すかのように、少年は首を左右に振る。
「小僧、上から話してんじゃねぇよ！こっちに降りてきやがれ！首が痛くなっちまうだろうが！」
攻撃をする仕草は全て消した筈だった。
青年の不意を衝こうと繰り出されたターレスの攻撃は、軽々と青年に避けられてしまう。
ターレスの攻撃が遅かった訳ではない。
青年の動きが予想以上に早かった。
戦闘力からは考えられない速度でターレスの攻撃をかわすと、青年は警戒を解かぬままベジータ王の目の前に降り立った。
「・・・我々はフリーザの手の者ではない」
「証拠はあるのか」
青年の言葉にトーマが肩をすくめ、パラガスが溜め息を吐く。
「では、お前がフリーザの手の者ではない証拠は？」
ベジータ王の問い掛けに、青年は答える事が出来なかった。
「フリーザの手の者でないのなら、さっさとこの場から離れた方が良い。フリーザの軍がこの近隣に到着する。戦いに巻き込まれたくなかろう」
注意を促すが、青年が聞き入れる様子はなかった。
尤も・・・フリーザの名を出す度に殺気を滾らせるこの青年が大人しく引くとはベジータ王も初めから思ってはいなかったが。
「オレはフリーザを倒す為に此処に来たんだ！貴様等の指図は受けない！貴様等こそ、その程度の力で挑んでも死ぬだけだ！」
「テメェ・・・」
ここまで言われてはターレスも黙っては居られなかった。
戦闘力の欠片もない者に言われる筋合いはない。
怒りを顕わにしたターレスが一歩踏み出したところで、トーマがその動きを制する。
「お前、本当にバーダックに似てきたよなぁ・・・キレやすいところなんか特にな」
「誰がキレやすいって？」
声のした方にその場の全ての者が視線を向けた。
青年は船から出てきたバーダックの姿を確認すると、驚愕に目を見開き、同時にフリーザだと思っていた強い気配の持ち主がバーダックとその後から出てきた人物のものである事を解した。
「お早いお目覚めで。傷の具合は大丈夫なのか？」
「問題ねぇよ。それよりトーマ、このガキは何だ」
バーダックが視線を青年に向けると、青年は何か言いたげな表情をする。
「さぁな。フリーザを倒しに来たんだとよ」
「へぇ・・・地球人にもフリーザの野郎と戦おうなんて考えるヤツが居たのか。おい、ガキ！テメェの出番はねぇから引っ込んでろ！」
既に目視できる距離までフリーザの宇宙船は迫ってきている。
大気圏を突破し、バーダック達の船から少し離れた場所へ着陸態勢を取っていた。
それを確認するや、青年の返答を待たずに6人のサイヤ人はフリーザの船を目指して飛び立つ。
「一体・・・如何いう事なんだ・・・」
少年は混乱する頭を抱えながらも、当初の目的を果たす為に飛び立ったサイヤ人達の跡を追った。