AnOpening 01
「生命反応有、前方4,500」
「周囲警戒態勢のまま回収作業急げ!」
一つの惑星が一瞬にして消滅した。
その星の住民はほぼ全滅。
爆発により発生した隕石群は周辺の惑星へと降り注いだ。
回収作業に当たっている者達は懸命に【生体反応の主】を探し続ける。
彼らの命が助かったのも、偶然でしかなかった。
自分達をまるで消耗品であるかの如く扱う支配者へ奇襲を仕掛けようと秘密裏に星から飛び立った。
そこで目にしたもの。
相手が予想以上に強大な力を持つ存在であった現実。
唯一人、惑星の崩壊を食い止めようとした同胞の姿。
段々と弱ってゆく生体反応を見ている事しか出来ない時間は、まるで時が止まっているのではないかと思える程に永かった。
生体反応の主の生命力を信じ、惑星を消し去った支配者達がこの場から去っていくのを待つしか出来なかった自分達に悔しさが湧き上がる。
宇宙空間に多少の耐性がある種族とはいえ、生身の、それも怪我を負った状態で何時間も持つ訳が無い。
見落としの無い様、丁寧に、そして迅速に探索は行われた。
「こいつは・・・酷い・・・」
生体反応の主は生きているのが不思議な状態だった。
身体の左半身は胸部を残して失われている。
「治療室!メディカルマシン及び生体パーツの準備を頼む!」
『治療室、了解した!』
回収班からの連絡を受けた治療室では生体反応の主の情報を呼び出し、船に積んである生体パーツとの適合検査が進められていた。
この船に積んであるパーツに適合するものが無ければ、彼の命が助かる可能性は極端に下がってしまう。
「チッ!これも駄目だと!?他に無いのか!」
何としても彼を助けたかった。
彼が何故、支配者の思惑に気付いたのかは解らない。
だが、そんな事は最早関係なかった。
必要なのは彼がたった一人で強大な支配者に立ち向かったという事実のみ。
「惑星ミートより救難信号確認!極秘周波数を使用しております!」
「回収班を収容次第、進路を惑星ミートへ向けろ!」
今の自分達に出来る事は各惑星に散らばる同胞達の救出以外に無い。
本来ならば母星をこの様な目に合わせた支配者へ一矢報いたい所だが、現在の戦力では無駄死にするのは目に見えている。
極秘周波数を用いている事から同胞の、それも部隊長クラスの戦士が生き残っている可能性が高い。
ならば彼等を助け、戦力を整え、確実に息の根を止められる様になる日まで。
息を潜めて過ごさなければならない。
「収容完了いたしました!現在治療室へと搬送しております!」
「よし、惑星ミートへ急げ!」
その後も、極秘周波数を使用した救難信号が幾つかの惑星から確認された。
しかし・・・
例え生存者を救えたとしても。
流浪の民と化した彼等に変えるべき場所は存在しなかった。