AnOpening 08
「喰らえ!」
「クッ・・・まだだ!」
トレーニングルームから爆音が聞こえてくる。
「またかよ。ターレス、行くぞ」
もはや呆れるしかない。
爆音は一種の合図と化していた。
トーマがトレーニングルームの扉を開くと、中ではいつも通りバーダックとブロリーが倒れている。
「今回は相打ちか」
「超サイヤ人でもねぇのに無茶すんだからよ、この親父は」
バーダックが目覚めてからもうすぐ2年。
当初は中々動かせなかった左半身も今は問題なく機能していた。
地球への到達も目前となり、最近はトレーニングでも気合の入り方が違ってきている。
今回などは強固に作られているトレーニングルームの一角が破壊されていた。
重傷を負っている2人をそれぞれが担ぎ上げると、すぐさま治療室へと向かう。
バーダックが目覚めてからというもの、来る日の為に皆がトレーニングを積んでいる。
特にブロリーは当初、その戦闘力の高さから真面に相手が出来る者がおらず、その能力の断片すら目覚めさせる事が出来ずにいたが、動けるようになったバーダックが相手をする事で才能を開花させるに至った。
だが、この2人。
トレーニングという名の実戦練習を始めると必ずどちらが一方が、時には今回のように2人共にメディカルマシン送りとなっている。
手加減、という言葉はこの2人の間にはない。
実戦さながらの訓練でなければ戦闘力が上がらないのが理由の一つだが、面倒を見る側からすれば迷惑この上ない話で、その上サイヤ人の特性により回復する度に戦闘力が上がってしまい、他のメンバーとの格差は広がる一方だった。
「それにしても・・・上がり過ぎだよな・・・」
「ブロリーは伝説の超サイヤ人様だから、で説明付くけど親父はなぁ・・・」
ブロリーの戦闘力はノーマルスリープの間もある一定値までは上がっていった。
生まれた当初は10,000だった戦闘力が目覚めた時には500,000を超えており、現在では計測不能。
不安定だった超サイヤ人への変化も、バーダックとのトレーニングを重ねる毎に安定してきている。
「オレの戦闘力だってサイヤ人の限界って言われてた数値は超えてるってのによ。親父とブロリーだけ突出しちまった」
「悔しいよな・・・俺なんざお前にまで抜かれちまった」
バーダックの戦闘力は惑星ベジータに居た頃は今ほど急激な上昇はしていなかったとトーマは記憶している。
それでも下級戦士には前例のない10,000という戦闘力を誇っていた戦士だった。
戦闘力が著しく上昇するようになった要因が、死ぬほどの攻撃を受けたからなのか、それとも身体の一部を移植した事による相乗効果なのか、理由は誰にも解らない。
それでもバーダックは限界知らずな戦闘力の上昇を手に入れ
狂喜した。
相手は惑星一つを簡単に破壊する力を持つもの。
どれだけ戦闘力を上げれば彼の者を上回るのか。
相手の戦闘力が解らない現状では、上げられるだけ戦闘力を上げてしまいたかった。
トーマ達もそれは理解しているが、6人しかいない状況では無意識に力をセーブし相手に重傷を負わせないように身体が動いてしまうのだが、バーダックとブロリーに至ってはそれが全くなかった。
「トーマ、ターレス。バーダック達の様子はどうだ?」
艦内の通信システムからパラガスの声が流れ聞こえる。
「半日もすりゃ治るだろうさ。ま、起きたら起きたでまた始めるんだろうけどな」
「そうか・・・ならばお前達だけでも良い。こちらに来てもらえるか」
基本、各々が自由に過ごしている艦内でパラガスからこの様に呼び出される事は無かっただけに、不安を覚えながらも2人は治療室を後にする。
コントロールルームにたどり着くと、神妙な面持ちをしたパラガスとベジータ王の姿があった。
「不味いことになった。奴等の大型船が地球へ向かっている。このままでは鉢合わせだ」
レーダーで感知しきれない範囲に撒いている小型探査機からの映像には、まさしく彼の一族が使う宇宙船が映し出されている。
「今から速度を上げれば我々の方が先に地球へ到達することは可能だ。尤も、パラガスの計算では僅かな差でしかないが・・・だが、僅かでも先に到達出来れば待ち伏せをされる危険性は排除出来る」
「なら、さっさと行くしかねぇな。親父とブロリーの治療が間に合うか、微妙なところだけどよ」
現在地から速度を上げたとすると地球へ到達するのは約半日後。
治療が済むのが先か、地球で彼の者との戦いが始まるのが先か。
どちらが先になろうとも、最悪を免れる選択肢は1つしかない。
サイヤ人達を乗せた宇宙船は速度を上げ、数時間後には地球の大気圏へと突入していった。