〜言の葉の部屋〜
半神の願い scene-05
日本・某所
「「「「星矢!」」」」
バン、と乱暴に開けられた扉から現れたのは青銅聖闘士4人組だった。
心配する4人の姿を目にした星矢は、何故か怪訝な顔をしたまま小声で童虎に話しかける。
「なぁ・・・どうして輝火がオレの心配なんてするんだよ」
星矢の言葉に童虎は4人を見てポン、と手を叩いた。
「おぉ!確かに輝火に似ておるの。じゃが、ほれ。よーく見よ」
そう言われて目を凝らし、あぁ、と納得したかと思えば腑に落ちない顔をする。
「あれ・・・何でオレ・・・一輝と輝火を間違えたんだ・・・?」
どちらの存在が大きいかと考えれば敵である輝火よりも、兄であり頼りになる一輝の方が遥かに上である。
だというのに、真っ先に輝火だと思ってしまったばかりか、兄弟である他の3人の名前も瞬時には出てこなかったのだった。
「細かい事は気にせんことじゃ。あやつ等もお主がそんな顔をしよるから戸惑っておるぞ」
童虎に言われて星矢はハッとした。
「皆・・・心配かけてごめんな」
もう大丈夫だから、と笑顔を向ければ4人が4人とも笑顔を返す。
口々にお互いを心配する言葉ばかりが出る兄弟達。
童虎はそんな彼らを見遣りながらも、1つの考えに思考を奪われていた。
星矢が一輝と輝火を間違えた。
童虎が遠い記憶を辿れば、最後に見た輝火は不死鳥の化身と呼んでも過言ではない姿だった。
そして・・・先の大戦後、鳳凰星座の聖衣が発見された。
人の世で88星座に数えられながら、唯一その姿を見た者が居なかった鳳凰星座の聖衣。
88星座の聖闘士が全て揃う事は稀であったが、先の大戦で鳳凰星座の聖衣が無いにも関わらず88の聖衣が揃うという事態が発生した事から、鳳凰星座の聖衣を探す者は居なくなった。
その為、聖戦後に発見された89番目の聖衣の存在に誰もが目を疑ったのを童虎は覚えている。
「そうか・・・お主は大切な者を護る為に今生に転生しておったのか・・・」
最後に残した言葉の通りに。
そう考えれば納得出来る事ばかりであった。
青銅聖闘士とは思えない小宇宙。
アテナの為ではなく、大切な兄弟の為に己の力を振るうその生き様。
黄金聖衣にすらない能力を秘めた聖衣は、彼の思いに答える為に太陽鷺の冥衣が鳳凰星座の聖衣へと姿を変えたものなのだろう。
「何故、今まで気付けんかったのかのぉ・・・」
あれだけ姿が似ていれば、思い出さずには居られぬ相手だと言うのに。
仲良く話す5人に視線を戻すと、童虎の視線に気付いた一輝と目が合い、無言のまま一礼される。
なんとも居えないむず痒い気持ちになった童虎は気を取り直して一輝ら青銅聖闘士達に星矢の現状を改めて説明した。
「と、言う訳でな。身体に関しては聖域でリハビリをしてはどうか、と言うのがアテナのお考えじゃ。このまま日本でも構わんのではと思ったのじゃが、星矢の小宇宙を感じて厄介な連中がしょっちゅう来ても面倒なんでのぉ」
十中八九、いや、100%の確立で招かれざる客は来るに違いなかった。
それらと衝突した場合に予想される周囲の迷惑を考えると、此処に居続ける事は出来なかった。