〜言の葉の部屋〜

半神の願い scene-01



 温かい思いが少年の体を包んでいた。
 そして語りかけてくる。
 目覚めろ、目覚めろ、と懸命に。
 少年はその声の主を安心させたかった。
 目覚めたい、目覚めたい、と懸命に願った。
 どれ程の時をそうしていたのだろうか。
 刹那の様でもあり、悠久と思えるほど長くも感じた。






 開いた瞼の先には見知った者の見慣れない表情。
「・・・童・・・虎・・・・・・?」
「やっと、目覚めおったか」
 童虎と呼ばれた青年は満面の笑みを浮かべた。
 柔らかい、心の底から安堵したかのような笑みを。
「やっと・・・?」
 少年は身体を起こそうとしたが、何故か自由に動かない。
 ままならない自身に苛立ちを感じつつも、童虎の答えを待った。
「お主はあの戦いから半年も寝こけておったのよ」
 あの戦い。
 少年の記憶に残っている最後の戦いは冥王ハーデスとの聖戦。
 それから半年も経ったのか、と少年が考えるとズキリと頭が痛んだ。
「皆、心配しておったのだぞ。黄金も白銀も青銅も関係なくな。流石に聖域を空にする訳にはいかんから見舞いは交代制になったがの」
 今日は自分に順番が回ってきた日だったのだと嬉しそうに語る童虎の説明に、少年が共に戦った仲間達の姿を思い浮かべ様とすると、頭の痛みが酷くなった。
 考える事を邪魔するかの様に襲ってくる頭痛に顔を顰めていると、再び心配そうな顔に戻ってしまった童虎が目に映る。
 これ以上、心配させたくない。
 少年はそう思い、痛みを堪えて笑顔を浮かべた。
「大丈夫、寝起きだからかな?ちょっと頭が痛いだけだよ。それより黄金や白銀聖闘士も、って?」
「おぉ!そこから説明せねばならんかったのぉ。アテナの慈悲で蘇ったんじゃよ。今頃はお主の小宇宙を感じ取って聖域を飛び足したくて仕方なかろう」
 そこまで話してから童虎はうん?と首を捻った。
「お主、ワシが生きておる事は疑問に思わんかったのか?」
 黄金聖闘士の事を聞くならば、共に命を散らした童虎が此処に居る事に対して真っ先に疑問が湧く筈である。
「なに言ってんだよ。童虎は俺達より先にシオンと地上に戻ったじゃないか」
 その言葉に童虎の顔色がサッと青褪める。
「せ・・・星矢?」
「何だよ」
「た・・・」
「た?」
「大変じゃー!」
 童虎の絶叫が室内に木霊した。




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