聖なる領域に入った日にゃ… Prologue
「此処は・・・何処だ?」
目の前に広がる光景を、オレは呆然と眺めていた。
いつもと変わらない日々に、久しぶりに暇つぶしでもしてくるか、と考えたのが運の尽き。
次元断層の裂け目
オレは【穴】と呼んでいるが、入った穴が悪かった。
この穴には2種類ある。
行き場の選べる穴と、選べずに入ったが最後どこに繋がっているか解らない穴だ。
コレだけは見た目で判断する事が出来ない。
今の器になってからは選択出来る穴が多かった為に油断していた。
オレが自分の存在に気付いた時、周りには何も無かった。
一面に広がる闇。
行けども行けども、闇しかない。
自分以外の誰かと会う事も無く、たった1人の闇。
寂しい、なんて感情は持ってなかったが好奇心はあったな。
他に何か居ないのか、此処ではない場所なら何か居るのか、なんて考えて少し次元をずらして探索してみたりもしたが、結局はオレ1人しかいなかったわけだ。
流石にただ暗いだけの空間には厭きたな、と考えた時、目の前の色が2色に分かれた。
今でもあの時の光の光源が何だったのか解らないが、闇色一色だった世界に光が生まれていた。
真っ暗闇が詰まらない、と考えただけでこれだ。
ならば、とオレは【自分以外の存在が欲しい】と望んだ。
光は爆発、拡散し、後に宇宙と呼ばれるモノの基礎が出来上がった。
だが・・・出来上がった【存在】はオレの望みを叶える様な形はしていなかった。
炎に包まれたモノ、水に覆われたモノ、大気の集まりの様なモノ。
様々な形をなしておりコレはコレで面白かったが、オレと同じように【モノを考える存在】は生まれなかった。
望み方が悪かったのか?と今度はもう少し具体的に望んでみる。
【自分以外の意思を持った存在が欲しい】と。
望んだ存在は生まれた。
生まれたんだが・・・今度は何でかオレの存在に気付きやしない。
その上、勝手に先に生れていた様々なモノ達を作り変える始末。
中でも大地と水に覆われたモノの上に【生物】を創り出したヤツ等は自分の事を【神】を称した。
暫くはソイツ等の様子を見てるだけの日々が続いたわけだが・・・見ているだけじゃ流石に厭きる。
勝手に弄られたモノの上には結構色々な種族が生まれていた。
【人】や【獣】、【魔物】【天使】【悪魔】【鬼】など今じゃ【人外】と呼ばれる種族も次々と生まれ、オレはそいつ等を知りたいと思うようになっていた。
だがそのままではそいつ等と関わる事の出来ないオレは、その中でも【生まれながらにして死んでいる】赤ん坊の身体を貰う事にした。
その身体がオレの力に耐えられなくなったら次のヤツに、といった具合で何度も何度も何度も。
繰り返す度にオレの力も増え続け・・・オレは意識体である自分自身
所謂【魂】と言うヤツに直接封印を施して器に掛かる負担を都度減らす必要があった。
今となっては全部の封印をといたらどうなるのか、オレ自身でも解らない。
無責任だとは自分でも思うが、開放する必要は無いだろうから問題は無いと考えている。
逆に封印をしない場合は器が直ぐに崩壊したり、周囲のモノ達に影響が出たりで大変だった。
話を戻すが、この生き方に厭きる事は無かった。
種族が違えば生き方も違う。
繰り返しだが繰り返しではない状況はとても楽しかった。
力を封じているからか【神】に目を付けられる事も無く、自由気ままな日々。
そんな事を数え切れないくらい繰り返していた時に【穴】の存在に気付いた。
穴の先にはそれまで過ごしていた場所とは微妙に違う場所
今の言葉だと平行世界と言われる場所が存在していた。
ふと考えてみると、一番初めの頃に存在を探して超えまくった次元の断層。
その時にオレがあけた穴が何らかの拍子に再び開いたのかも知れないな。
時々、オレ以外にもその穴に落ちるモノ達が居たがそれがそいつの運命なんだと放置した。
穴の先に広がる場所は環境の悪い場所は少ないからだ。
今回も暇つぶしに以前訪れた世界に行こうと穴に飛び込んだんだが・・・慣れとは怖いな。
オレは選択出来ると決めて掛かっていた。
だからこそ、突然目の前に現れた光景に呆然としてしまった訳だ。
厄介な世界でなければ良いんだがな・・・