〜言の葉の部屋〜
半神の願い scene-04
海界・海底神殿
「ポセイドン様。南大西洋の柱の復旧が完了致しました」
柱の守護者であるソレントが告げる。
「他の柱も程なく。ですが・・・」
どう伝えたものかと、ソレントは隣に控えていたバイアンと顔を見合わせた。
アテナの聖闘士に破壊された7本の柱は各海を支え、海底神殿の結界の要でもある。
永い年月を重ねれば自然修復される物ではあるが、ポセイドン復活の際の洪水や聖戦により痛手を受けている地上への負荷を考慮するならば修復は早い方が良い。
その為、蘇った海将軍達は己の守護する柱の復旧に全力を注ぎ、各柱は順調にもとの姿を取り戻しつつあるのだが。
「北大西洋か・・・」
柱を司る海将軍 海龍はアテナの聖闘士でもあった。
1人の闘士が2人の神に仕える前例は無い為、先に黄金聖衣の資格を得ていた事から海龍の海将軍は別に存在しているのではないかと海闘士達に探させているが全くその気配すら感じられず、その上、当の海龍の鱗衣は未だにカノンを待っている様子を見せていた。
「正当な双子座の聖闘士はカノンの兄だと聞き及んでおります。よもやとは思いますが・・・」
「かも知れぬな。あの性悪小娘ならば何をしようともおかしくない」
人の世に語られる神話を耳にした時、ポセイドンは己の耳を疑った。
何故、自分が己の息子を人風情に下げ渡し、その上アテナの手綱まで付けさせねばならぬのか、と。
ペガサスの母であるメデューサが誰とも触れ合えぬ姿になったのはアテナの仕業だと言うのに。
その魂は未だにアテナに縛り付けられている。
思い出せば思い出すほど、腹の底から沸々と怒りが湧き上がって来た。
「クリュサオル」
ポセイドンは神代においてペガサスの双子の兄弟とも言える者の名を呼んだ。
「お呼びでしょうか」
「天馬星座が目覚めた事は知っているな。地上へ向かい我が息子でありお前の兄弟でもある魂を持つ
天馬星座を連れて来い」
「天馬星座を・・・ですか?」
「何度も言わせるな。親子兄弟が共に過ごして何が悪い。あの性悪小娘の傍においておくなど我慢がならん」
その性悪小娘は貴方の姪であり、親子兄弟と言うなら青銅聖闘士達こそが今生の天馬星座の実の兄弟なのでは。等とは心の中で思っても決して口に出さないのが海将軍である。
「恐れながら、カノンは如何致しましょうか」
「天馬星座が来るとなれば勝手について来るであろうよ」
一挙両得、良い案だ。と、1人頷く海の最高権力者を尻目に、本日何度目になるか解らない溜め息が海底神殿に響いた。