〜言の葉の部屋〜

海誓山盟 07




「そろそろ帰らんと小僧と鉢合わせするな。あやつの話を疑っていた訳ではないが・・・ここまで元気なお前達が見れて安心したぞ」
「こまつさんはうそをついたりしません」
 そうだ。
 うそはだめだって、こまつはいってた。
 うそをつくとじぶんもあいてもつらくなるからって。
「ばっはっは!そうか!だがな、小松はお前達の為なら嘘をつくぞ」
「おれたちのためなら?」
 うそはだめだっていってたのに?
「お前達が心配せんように、お前達が嫌な思いをせんようにと、どうしても真実を告げられん時。小松ならば優しい嘘をつく。お前達の心を守るためにな」
 はげおやじのはなしはココのはなしといっしょでむずかしい。
 うそってひとつじゃないのか?
 こまつがだめっていううそと、はげおやじのいううそはちがうのか?
「・・・小松の嘘を1つ、教えてやろう。お前達の             
 うそだ・・・
 こまつがうそをついたんじゃない。
 このはげおやじがうそつきなんだ!
「信じられんか・・・最も、小松はお前達のそんな顔を見たくなかったからこそ、真実を隠し、全く逆の事を告げたんだろうがな」
 おれたちのかお?
 ココはがまんしてるときのかおだ。
 サニーはなきそうなときのかお。
 ・・・おれはどんなかおしてんだ?
「小松の嘘は小松の希望だ。例え嘘を告げたとしても、それが真実になるかも知れんからな」
「・・・ことだま・・・」
「あ!」
『言葉は口に出したら力が生まれるんです』
「まつ、いってた」
 そうだ。
 わるいことをいったらわるいことがおきるから、いったらいけないんだ。
 いやなことがあってもいやだっていわないで、どうしたらいやじゃなくなるかをかんがえるんだって。
「そうならないで欲しいという思いから生まれる嘘。それが優しい嘘だ。だが、嘘を言っている本人は大切な者に嘘をついた痛みを背負わなければならん。お前達はどうする?真実を知ったと小松に告げるか、嘘をついて隠し通すか」
 いわない。
 いったらこまつはぜったいにおれがみたくないかおをする。
 ココやサニーだって、きっとおなじだ。
「お前達は小松の嘘が真実になるように努力しろ。力の制御を怠るな。現状に満足するな。万が一、研究所の人間がお前達を連れ戻しに来た時、己と己の大切な者は守れるくらいになれ!」
 はげおやじにいわれなくてもわかってる。
 こいつだってけんきゅうじょのやつなんだ。
 こいつにかてなきゃ、こまつと、ココとサニーとみんなでいっしょにいられない。
「・・・つよくなってやる」
「そうだ。強くなれ。最も・・・我が儘を言って困らせたり、色々自分の中へ溜め込んで心配させたり、甘える事しか出来んヤツが強くなれるとは思えんがな!ばっはっは!」
「そんなことねーよ!」
「・・・もうこまつさんにしんぱいさせたりしません」
「れも!」
「「・・・サニーはむりかも・・・」」

 いっていいうそと、いったらいけないうそ。
 おれたちがはげおやじにあったことがこまつにばれても、きっとこまつはおこらないでこまったかおする。
 けど、きょうのことはこまつにぜったいにばれたらだめなんだ。
 こまつがおれたちにいわなかったことも、おれたちがしったってわかっちゃだめなんだ。
 おれはしゃしんみたいな、こまつのわらってるかおがみたいんだ。
 だからおれたちはこまつにうそをつく。
 おれたちはなにもしらない。
 はげおやじのことも。
 おりじなるのことも。
 こまつがないしょにしたことも・・・




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