〜言の葉の部屋〜

海誓山盟 01




 すぐそばにかんじるのに、てのとどくところにいない。


 いっしょになればもっとおおきくなれるに、ここのひとたちはきづかない。



「もうこんなに減ってしまったか・・・」
 ぼくをみているのは、ここでいちばんえらいひと。
 ほかのひとと、すこしだけめのひかりがちがうひと。
「次に出せる子はどの子だ?」
「T058、C042、S077ですね。Zは024の予定ですが、少々遅れています」
 これはぼくたちのこと。
 ここからでられるだれかのこと。
 ここにもどってこないこのこと。
「サンプルの数も少なくなってますからね。以降はより慎重にやりませんと。しかし・・・どうしてこうも失敗が続くのでしょうか?」
 それはぼくたちがあなたたちをきらっているから。
 あなたたちといっしょにいたくないから。
 あなたたちのおもうままになりたくないから。
「・・・次の子達だが、今までと方針を換えることにした。まぁ、今以上の実験だがな」
「1体くらいなら別の方針を試してみても良いとは思いますけど、どうされるおつもりですか?」
「なぁに、ここで育てて無理なら外で育ててみようかと思ってな」
 ・・・そと?
「む、無茶ですよ!研究所の外で育てるなんて!」
「会長と副会長の了承ならば、さっきとってきたから心配するな。とりあえず、T058、C042、S077はワシが預かる」
 ここのそとのそと?
「さて、この子か」
 ぼくをいかしていたみずがどんどんとへっていく。
 あぁ、あれはぼくのことだったんだ。
「ほれ、まずは息をしろ。そうだ、ゆっくり息をするんだ」
 いき。
 なかとそとでくちからからだのなかにはいってくるものが、こんなにちがうなんておもわなかった。
「寒いだろうから、今はこれでもかけておけ。最も、そのうち体が勝手になれるだろうがな」
 さむい。
 これがさむい?
「さぁ、これからお前の兄弟を迎えに行くぞ。これから一緒に暮らすんだ。仲良くするんだぞ?」
 なかよくしてどうするの?
 ぼくはしっている。
 そとにでたこがどうしてかえってこないのか。
「おぉ!そうだった。まだお前の名前を教えてなかったな。お前の名は――――――――」
 なまえなんてひつようない。
 なんてよばれてもきにならない。
 だってぼくはしんじゃうから。

 さようなら。
 まだねむっている、ぼくたち。
 さようなら。
 ここでしんじゃった、ぼくたち。
 また、あおうね。
 きっと、ぼくもおなじところにいくから。





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