〜言の葉の部屋〜

海誓山盟 05




 はげおやじがきた。
「・・・自分達でワシを呼び出しておきながら何だその目は」
 はげおやじをよんだのはおれじゃない。
 ココがこまつにはきけないことをききたいからよんだんだ。
「マンサムしょちょう、もってきてくれましたか?」
「こんな事が小僧に知れたらワシが怒られるんだぞ」
 きょう、はげおやじがくることはこまつにはひみつだってココがいってた。
「しかし・・・お前達は本当に元気に育っているようだな。小僧から話は聞いていたが」
「ぼくたちはって・・・やっぱり・・・」
「あぁ。今の所、お前達だけだ」
「なぁなぁ!なにがおれたちだけなんだ?」
 ココはおれのしらないことをたくさんしってる。
 おれはこまつしかしらなかったのに、ココははげおやじのこともしってた。
 こまつもおれとサニーにはなすまえにいつもココにさきにはなす。
 ちゃんとおれにもはなしてくれるけど、ココだけとくべつみたいでずるいよな。
「小僧の所にいるお前達は幸せだなという話だ」
 でっかいはげおやじのてはおれのあたまをひとつかみだった。
 こまつみたいないいにおいがしないし、うえからおさえられるかんじがきらいだ。
「はなせよ!はげ!」
「ハンサムだと!」
「いってねぇよ!」
 どんなみみしてんだ?このはげおやじ。
「トリコ、サニーもよんできて。ぼくたちはちゃんとしっとかないといけないから」
 しるって、なにをだ?
 おれたちにひつようなことはこまつがおしえてくれる。
 くいもののこととか、いきるってこととか。
 ねてたサニーをつれてくるとはげおやじがしゃしんをみせてくれた。
「ほれ、これがお前達のオリジナルだ」
 おりじなる?
 おりじなるってなんだ?
「これが・・・ほんとうのぼくたちだよ」
 はげおやじがもってきたしゃしんにはこまつもうつってる。
 でもたのしそうにうつってるこまつのとなりにはでっかいおとこやはでなおとこがうつってた。
 それにココににてるおとこも。
「ほんとうのおれたちってなんだよ!」
 こんなのおれじゃない。
 だっておれはここにいる。
「お前達は・・・ワシらの研究所で生まれた命だ。そこに写ってる男達の細胞からお前達は生まれたんだ」
 わかんねぇ・・・
 こいつとおれはぜったいにちがう。
 ココもサニーもこいつらとはちがう。
「この男達の名も、トリコ、ココ、サニーと言う」
「おなじ・・・なまえ・・・?」
「研究所の者にとってお前達とこいつ等は同じ存在だったからな」
 じゃあこまつも?
 こいつらをしってるこまつも、おれとこいつがおなじだっておもってるのか?
「だから、お前達をお前達として育ててくれるだろう小僧に預けた」
「おれたちをおれたちとして?」
「そうだ。小僧はお前達に何をしろ、何をやれと言わんだろう?」
「いうぞ!そうじとかかたづけとか!」
「・・・それはトリコがめんどうだからってやらないからだよ・・・」

 だっておれがさわるとこわれる。
 てれびとかさらとかこっぷとか。
 なのにこまつはこまったかおするだけで、おこらないんだ。
 こまつのこまったかおなんてみたくないのに。
 サニーがかみであそんでこっぷをわったときはおこったのに。
 ココがしんじゃうっていったときもおこったのに。
 おれだけおこられないのはへんだ。
 でもみつけたんだ。
 おれがやらないっていうと、こまつはおこる。
 だからおれはやらないってきめたんだ。




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