一期一会 05
「何でオレ達に言わなかったんだよ。研究所絡みなら
」
「研究所絡みだから、ですよ。皆さん、研究所には嫌な思い出が多そうなのに。前にココさんが大変だったってトリコさんが教えてくれたんじゃないですか。そんな嫌な事を思い出させてしまいそうなのに相談するのもどうかな、と思いまして・・・」
「あのなぁ・・・小松。オレ達は
」
グルルルルルル、とまるで猛獣の鳴き声のような音がトリコの言葉を遮った。
「こまつ〜〜〜てきじゃないならめし〜〜〜〜〜」
「すみません。皆さんの分も作りますから、少し待っていてもらえますか?」
膝の上のサニーと背中のトリコを下すと、キッチンではなく何故か玄関から外へと出て行ってしまった。
「で、なんでおりじなるがくるんだよ」
小松が居なくなると先程までとは違う、明らかに敵意の籠った声が聞こえてきた。
視線をやれば無邪気な表情までもが消えている。
「オリジナルって・・・もしかして君達は・・・」
「じぶんのことくらい、わかってます」
自分達がどういった存在なのか。
そんな事はとっくに知っていた。
「まえらのしりょうもぜんぶよんだし。あ、まつはしらないからいったらだめだぞ!」
小松の家で暮らしたこの2ヶ月。
自分達の後ろに小松が誰かを見ている様な時があった。
『あ〜、もう。トリコさん?それはココさんとサニーさんの分もあるって言ったじゃないですか。・・・まぁ、トリコさんらしいですけどね』
(おれらしいってなんだ?)
『いつも手伝ってくれてありがとうございます。こういう所はやっぱりココさんですね』
(やっぱりってなに?)
『サニーさん、好き嫌いはダメです。バランス良く食べないと。全く・・・そんな所は似なくていいのに・・・』
(にるってだれに?)
気になり始めると言葉の端々が気になってしまった。
自分と誰かを比べているのではないかと。
それでも、そんな事を直接小松に聞くのは怖くて、小松が仕事に行っている間にマンサムを問い詰め、オリジナルである四天王の資料をみせてもらった。
自分達より遥かに強い、そして自分達より先に小松と出会っていたオリジナルの存在にショックを受けたのは事実。
その姿を見れば小松が自分達の後ろにその姿を見てしまうのも仕方のない事だと思えた。
「でもさ、おれたちがここにきてからおまえらこなかったし」
この2ヶ月。
小松は仕事よりも何よりも自分達を大切にしてくれていた。
(テメェ等のせいで断られてたんだよ!)
この2ヶ月。
小松に会う事すら出来なかった。
「おしごとがいそがしいのに、ぼくたちはここにいていいっていってくれました」
どんなに忙しい日でも食事は皆で摂るものだからと必ず帰ってきてくれた。
(あぁ・・・だからあんなに疲れが残っているんだ・・・もっと早くに気付いていたら・・・)
どんなに忙しくても、手を抜くという事を小松が一切しないと知っていたのに。
「まつがまえらじゃなくて、れたちをたいせつにしてくれるから、しらないことにした」
真実を知ってしまった事に後悔は無いが、それに気付いてしまった事を小松には知られたくなかった。
(つくしい・・・その精神はさすがオレ!けど気に入らん・・・)
真実を知りながらも小松の為に胸に秘める行為には同感出来るが、自分達を敵視する物言いにどうしても「子供の言っている事だから」と聞き流す事が出来ない。
しかし・・・
もし自分達がこの小さな自分達と同じ状況になったならば。
きっと同じ行動をとり、やはり先にいる存在に対して良い感情を向ける事は出来ないだろうと安易に想像できた。
自分を見て、自分を大切にしてくれる存在を他の存在に取られるなんて我慢出来る筈がない。
ただ、その気持ちは今の自分達にも言えるだけに大きな3人は複雑な気分で思い悩んだ。