一期一会 02
ピーンポーン
備え付けのインターホンが鳴る。
「はーい!」
ピーンポーンピーンポーン
今度は2回。
先程の返事は聞こえていなかった様だ。
「ちょっと待ってて下さいね?」
早く出なければと思うのだが、引っ張る手が中々それを許してくれない。
ピンポンピンポンピーンポーン
やっとの事でその手を離し、ドアホンの画面を確認しようとした途端・・・
ガタン、ガタン・・・グシャ!
玄関から不吉な物音が聞こえてくる。
その音に先程やっとの思いで離した手が再び握られていた。
(まさか、ね)
玄関を破壊するような来訪者に心当たりがありすぎた。
今の玄関も果たして何代目だった事か。
考えるのも虚しくなる程、この家の玄関は破壊されていた。
だが、その原因たる人物達が今日ここに来る理由が思い当たらない。
最も理由も約束もなく来る者達ではあるのだが。
「小松!」
真っ先に飛び込んで来たのは予想通りの人物だった。
この家の主の1.5倍近くある身長、何倍も筋肉がついた逞しい肉体、だと言うのに人に威圧感を与えない子供の様な笑顔の持ち主。思い立ったが吉日を信条とし、自分を決して曲げる事のない人。
「トリコさん・・・」
今、小松が一番きて欲しくなかった人の姿が其処にはあった。
「前、やりすぎだって!」
「全く。早く業者を呼んであげないと」
トリコの身体で姿は見えないが、その後ろから聞こえる声の主達も普段の小松ならば訪問を歓迎する対象なのだが、今は事態をよりややこしくするだけの疫病神の声にしか聞こえなかった。
「来ちゃったんですね・・・」
「来ちゃったんですね、じゃねぇ」
一歩、小松の方へと踏み出そうとした足に違和感を覚える。
力を込めれば動かせなくはないが、何かが足の動きを邪魔していた。
トリコは小松に向けていた視線を徐々に自分の足元へと移すと、其処にはモサモサと動く青い塊があった。