永劫回帰 04
「いまけんきゅうじょにのこってるのはマンサムしょちょうがほごしてるZ024
ぼくたちといっしょにくるよていだったこだけです。みんな・・・しんじゃいました」
「Z024?」
「なまえはしらないんです。ぼくがC042、トリコがT058、サニーがS077。けんきゅうじょでなかいにいたぼくたちはそうよばれてました」
今もはっきりと覚えている。
小松のもとに来た日の事を。
その日、研究所で交わされていた会話を。
そして
外に出て得た幸せを。
「ぼくたちはこまつさんにないしょでマンサムしょちょうとれんらくをとりました。ぼくはぼくたちがしんじゃったのをみてたから、ぼくいがいにもながくいきているぼくがいるか、しりたかったんです」
初めてマンサムを呼び出した日。
マンサムは小松が3人に秘密にしていた事を教えてくれた。
自分達より短い
たった一週間と言う時間も生きられない自分達の事を。
タイプTは体内温度の調整が出来なくなり、細胞が破壊された。
タイプCは次々と体内で自生される毒に細胞が耐え切れなくなった。
タイプSは全身の痛覚が過敏になり、痛みで精神から破壊された。
研究所の人間はそれらを【死の兆候】だと認識していた、とマンサムは言っていた。
そして残されたタイプZは・・・培養液から出た途端に生きる事を放棄するのだと。
「ちょっと待て。お前等3人とも知ってんのか?じゃあなんで、チビのヤツは自分がどうなるか解らねぇなんて言うんだよ」
「こまつさんはトリコにねつがでるのはしんじゃうからじゃないっていってくれました。ぼくたちはこまつさんのことばをしんじてます。だからけんきゅうじょのぼくたちと、こまつさんといっしょにいるぼくたちはちがうんだっておもうことにしました」
現に、研究所のデータと違い何か月も生きている。
研究所の自分達と同じ様な症状が出てはいるが、マンサムは症状が出ると数時間、長くても1日で活動を停止したと
死んだと言っていた。
だが何度も症状を出しながらも、自分達は生き続けている。
だから大丈夫だと思っていた。
小松を悲しませるような事にはならないと思っていた。
「けど、思っている間に悪化したと。前、1人で抱え込み過ぎ。ちっせぇオレなんて、なんも解ってねーだろーし」
「お前等がオレ達を嫌っているのはオレ達も解ってる。解ってるけどな・・・」
「最悪を回避する為にも、もっと早くに相談して欲しかったね」
「・・・ぼくは・・・ほんとうはしっていたんです。あなたのいう、さいあくをかいひするほうほうを・・・」
「「「知っていた?」」」
「もう・・・むりですけど・・・」
知っていた。
研究所の中に居た時から。
誰が教えてくれた訳でも無い。
それでも、その方法ならば確実に生きられると解っていた。
「ぼくは・・・ぼくたちといっしょになればおおきくなれた・・・」
「一緒にって・・・」
「ぼくたちはさいしょはひとつだったんです。わかれて、ふえて、いっしょになって、わかれて・・・はなされて・・・」
それでも、中に居る時はそのままで良いと思っていた。
あんな場所に長く居たいとは思わなかったから。
嫌いな人達を喜ばせる様な事はしたくなかったから。
死んでしまえば、放された自分達と一緒になれると思っていたから。
「でもこまつさんにあって、しんじゃうとなにもできないっておしえてもらって・・・」
考え方が変わった。
小松と、トリコと、サニーと。
ずっと一緒に居たいと思うようになった。
大好きな人を悲しませたくないと思った。
死んでしまったら全てが終わってしまうと知ったから、生きる事を諦めたくないと思えるようになった。
「ぼくはこまつさんにしんじゃわないでおおきくなれるほうほうをいおうとおもって・・・いえませんでした・・・。もし、ぼくがぼくたちといっしょになったら・・・ぼくがどうなるのか、わからなかったから・・・」
誰も知らない。
今の自分のままで小松と一緒にいられるのか。
それとも
自分では無い自分になってしまうのか。
それが怖くて小松に伝える事が出来なかった事を、今は後悔するしかなかった。